解雇の可否は「決める前」に決まっている

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解雇の可否は「決める前」に決まっている

2週間に2度寝坊し、早朝のニュースに穴を空けても、解雇は無効──。2026年10月にダイヤモンド・オンラインが取り上げた、最高裁が示した「解雇の条件」です。結論だけを見ると驚かれる方も多いと思います。ただ実務の感覚からすると、この判決が示しているのは「解雇できない」ということではなく、「解雇に至るまでの積み上げが足りなかった」という点だと感じます。コーポレート実務に携わってきた立場から、その意味を読み解きます。

目次

寝坊でも解雇が無効になった理由

見出しの事案は、ラジオ局のアナウンサーが2週間に2度寝坊し、早朝のニュースを放送できなかった、いわゆる高知放送事件です。最高裁は、この解雇を無効と判断しました。

解雇が有効になるための条件
・解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方が必要
・欠ければ、権利の濫用として解雇は無効になる
・この考え方は判例で積み上げられ、現在は労働契約法16条に明文化されている
= 「ミスがあった」だけでは足りず、解雇という手段が相当かまで問われる。

ポイントは、理由があるかどうかだけでなく、解雇という最も重い処分が、その事情に照らして相当かどうかまで問われることです。ほかに取れる手段はなかったのか。会社側の体制に問題はなかったのか。そうした事情がすべて考慮されます。

解雇無効のコストを数字で見る

解雇が無効になると、会社にはどれだけの負担が生じるのか。単純な例で計算してみます。

月給30万円の社員の解雇を、2年争って無効になった場合
・その間の賃金:30万円 × 24カ月 = 720万円
・社会保険の会社負担(約15%)を加えると:800万円超
・解雇予告手当(30日分)なら:約30万円
= 予告手当で済むと考えていると、桁が一つ違ってくる。

これに加えて、弁護士費用や、争っている間の現場の負担もかかります。解雇は、判断を誤ったときの代償が非常に大きい経営判断だということを、まず数字で押さえておく必要があります。

解雇の可否は「その前の1年」で決まる

コーポレート実務の立場から言えば、解雇の可否は「解雇を決めた日」ではなく、その前の半年、1年でほぼ決まっています。いつ、何について、誰が、どう指導し、本人がどう応じたか。改善の機会を与えたか。配置転換など、ほかの手段を検討したか。就業規則の解雇事由に当てはまるか。

こうした記録と手続きが残っていなければ、現場がどれほど「もう無理だ」と感じていても、会社の主張は通りにくいのが現実です。裁判で問われるのは、現場の実感ではなく、会社が何をしてきたかの証拠だからです。

記事で触れられているPIP(業績改善計画)も、同じです。目標が具体的で、支援の中身が伴ってはじめて意味を持ちます。退職させるための形式として運用すれば、かえって会社側に不利な証拠になりかねません。

雇う側の不安と、中小企業の現実

一方で、雇う側にとってこのリスクが重く、採用や賃上げを慎重にさせているという見方にも一理あると思います。一度雇えば簡単には辞めてもらえない。そう考えれば、正社員の採用に慎重になるのは自然な反応です。

特に人事部門のない中小企業では、指導記録を残す仕組み自体がないことも少なくありません。解雇の金銭解決制度の議論も長く続いていますが、制度が変わるのを待つより先に、評価基準と指導記録という地味な土台を整えること。それが結果的に、会社も社員も守ることにつながるはずです。

まとめ

  • 2週間に2度の寝坊で放送に穴を空けても、解雇は無効とされた(高知放送事件)
  • 解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要。現在は労働契約法16条に明文化
  • 月給30万円の社員の解雇を2年争って無効なら、社会保険の会社負担を含め800万円超。予告手当とは桁が違う
  • 解雇の可否は、その前の半年〜1年の指導記録と手続きで決まる。PIPも退職させるための形式にしない
  • 制度の変更を待つより先に、評価基準と指導記録という土台を整えることが、会社と社員の双方を守る

解雇規制の是非を論じる前に、自社が「説明できる人事」をしているかどうか。それが、いま問われていると感じます。解雇できるかどうかは、解雇を決める日ではなく、日々の人事の積み重ねで決まっているのです。

解雇やハラスメント、障がい者雇用のように判断の重い労務の論点では、社会保険労務士などの専門知識が支えになります。働きながら資格を目指すなら、通信講座を使う方法もあります。

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【出典・参考】
・ダイヤモンド・オンライン「『2週間で2度寝坊、仕事に大穴』でもクビは無効…最高裁が示した『解雇の条件』」(2026年10月3日)

※本記事は公表情報をもとに一般的な考察を目的として作成したものであり、特定の企業の評価や投資判断を推奨するものではありません。数値は出典記事に基づく参考値です。

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