固定残業代(みなし残業代)を、都道府県の最低賃金を基準に試算するツールです。「月給◯万円・固定残業◯時間分」の総額から基本給部分と固定残業代を切り分ける逆算と、時給から月額を積み上げる計算の2つに対応しています。ツールの下に、使い方・計算式・有効要件・よくある質問をまとめています。
使い方──2つのモードと入力項目
最初に都道府県を選ぶと、その地域の最低賃金(時給)が判定の基準になります。そのうえで、次の2つのモードから目的に合うほうを選びます。
給与総額から逆算
「月給30万円(固定残業代込み)」のように総額が決まっているとき、その中の基本給部分と固定残業代を切り分けます。求人票や雇用契約書の金額が適正かを確かめる用途に向いています。
時給から積み上げ
基本給の時間単価を先に決め、そこから月額の基本給・固定残業代・総額を積み上げます。新しく給与テーブルや求人条件を設計するときに使います。
- a 1か月の給与総額:固定残業代も含めた毎月の支給総額(通勤手当など、割増賃金の基礎から除く手当は入れません)
- b 1か月の平均所定労働時間:初期値は173.81時間(週40時間×365日÷7÷12か月)。自社の年間休日から出した時間がある場合は、その値に置き換えます。年間の所定労働日数は年間労働日数計算ツールでも出せます
- c 固定残業代の対象時間:何時間分の時間外労働を固定額で払うか(初期値30時間)
- d 割増賃金率:初期値1.25倍(労働基準法の最低基準)。会社が独自に高い率を定めている場合はその率に
- e 計算単位:固定残業代を何円単位で切り上げるか。切り上げにしているのは、払う側に不足が出ないようにするためです
計算式と計算例
「給与総額から逆算」では、給与総額=基本給部分(B)+固定残業代(C)とし、固定残業代を「基本給部分の時間単価×割増率×対象時間」として逆算します。
計算式(給与総額から逆算)
B(所定労働時間に対する賃金)= a ÷(1 + d × c ÷ b)
D(時間単価)= B ÷ b
C(固定残業代)= D × d × c(e の単位で切り上げ)
最後に、B = a − C として整え、D が最低賃金以上かを判定
たとえば東京都で、給与総額30万円・平均所定労働時間173.81時間・固定残業30時間・割増1.25倍・10円単位で計算すると、次のようになります。
A 給与総額
300,000円
B 基本給部分
246,760円
C 固定残業代(30時間分)
53,240円
D 時間単価
約1,419.71円
時間単価1,419.71円は、東京都の最低賃金(令和7年度・1,226円)を上回っています。見落とされやすいのは、総額だけを見ると高く見えても、固定残業代を除いた基本給部分で割ると最低賃金を下回るケースです。対象時間を長く設定するほど基本給部分は小さくなるので、時間数と金額はセットで確かめる必要があります。
固定残業代が有効と認められる3つの要件
計算が合っていても、制度の作り方と運用が要件を満たしていなければ、固定残業代は無効と判断されるおそれがあります。判例で確立してきた考え方は、次の3つです。
① 明確区分性:基本給などの通常の賃金と、固定残業代の部分がはっきり区別できること(「月給30万円(うち固定残業代53,240円・30時間分)」のように)。
② 対価性:その固定額が時間外労働の対価として支払われていること。就業規則・雇用契約書に明示しておく。
③ 差額精算:対象時間を超えて残業した月は、超えた分を別途支払うこと。実務で最も多い不備がここです。
要件の詳しい解説、時間数の決め方、無効になった場合のリスクや導入時の不利益変更の注意点は、「固定残業代の仕組みと3つの有効要件」で整理しています。
よくある質問
Q. 固定残業時間は何時間まで設定できますか?
法律で上限の時間数が決まっているわけではありませんが、36協定の時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。これを大きく超える時間数を固定残業代として設定すると、長時間労働を前提にした制度と見られ、有効性が争われやすくなります。実務では、月45時間を超えない範囲で、実際の残業実績に近い時間数にしておくのが無難です。
Q. 「平均所定労働時間」はどう出せばよいですか?
「1日の所定労働時間 ×(365日 − 年間休日)÷ 12か月」で出します。たとえば1日8時間・年間休日125日なら、8 × 240 ÷ 12 = 160時間です。初期値の173.81時間は週40時間を上限まで使った場合の値なので、休日が多い会社では時間数が小さくなり、時間単価と固定残業代はその分上がります。
Q. 残業が対象時間より少ない月は、減額してもよいですか?
固定残業代は、実際の残業が少ない月も固定額を支払う制度です。少ない月に減額する運用は、制度の前提と矛盾し、明確区分性・対価性を疑われる原因になります。逆に、対象時間を超えた月の差額精算は必ず行います。
Q. 深夜労働や休日労働も固定残業代に含められますか?
含めることはできますが、その場合は「時間外何時間分・深夜何時間分」のように内訳と割増率を分けて定め、それぞれ超過分を精算する必要があります。このツールは時間外労働(割増率は入力値)だけを対象にした試算です。
Q. 固定残業代は社会保険料の計算に含まれますか?
含まれます。固定残業代は労働の対償として毎月支払われる報酬なので、標準報酬月額の算定対象です。また、実際の残業代が増減して報酬が大きく変わったときは、随時改定(月額変更届)の対象になることがあります。詳しくは「随時改定は『昇給』だけじゃない」と「社会保険料 月額変更 試算ツール」をご覧ください。
Q. ツールの最低賃金はいつの額ですか?
ツールに表示している年度の地域別最低賃金(厚生労働省)です。最低賃金は毎年秋ごろに改定されるので、改定後の時期に判定するときは、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で最新の額も確かめてください。
※本ツールの算出額は目安です。最終的な賃金額や制度の設計は、就業規則・雇用契約の内容を踏まえ、労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
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