営業を自粛している最中に、「自粛破り」や新たな金銭詐取が起きていた──。2026年10月に東洋経済オンラインが報じた、プルデンシャル生命保険をめぐる問題です。金融庁が同社への業務停止命令に向けて最終調整に入ったと伝えられています。業務停止命令そのものよりも、自粛中にも不正が止まらなかったという点に、この問題の根深さが表れていると感じます。内部統制の構築と評価に携わってきた立場から、その意味を読み解きます。
数字が示す「見つからない構造」
記事によれば、1991年から2025年までの34年間で、不正に関わった社員らは107人、被害を受けた顧客は約500人にのぼります。
・被害を受けた顧客約500人 ÷ 107人 = 1人あたり平均4〜5人
= 一部の不心得者というより、長いあいだ「見つからない構造」が続いていた。
毎年3人以上の社員が不正に関わり、1人あたり平均4〜5人の顧客を巻き込んでいた計算になります。これだけの規模と期間で続いていたとなると、一部の不心得者の問題として片づけることはできません。不正が起きても見つからない、あるいは見つかっても止まらない構造が、長いあいだ続いていたと見るのが自然です。
統制には「整備」と「運用」がある
内部統制には、「整備」と「運用」の二つの段階があります。整備は、規程やルール、承認の仕組みをつくること。運用は、それが実際に現場で守られていることです。IPO審査や内部統制監査では、規程やルールがあるかどうかだけでなく、それが実際に守られているかを、記録で一件ずつ確かめます。
今回、同社は営業自粛という最も強い統制を敷き、事前承認という仕組みまで用意していました。整備の面では、打てる手を打っていたとも言えます。それでも現場で守られなかったのは、仕組みが足りなかったのではなく、運用が機能していなかったことを示していると思います。金融庁が「内部管理体制に大きな欠陥」と判断したのも、この点を重く見たからではないでしょうか。
・運用:その仕組みが、実際に現場で守られ、記録として残っているか
・審査や監査は、整備を確かめたうえで、運用を記録のサンプルで検証する
= 自粛も事前承認も「整備」。守られなければ統制にはならない。
子会社の不正は、グループの問題
もう一つ、実務者として気になるのは、親会社にも業務改善命令が出される見込みだという点です。子会社の不正は子会社だけの問題ではなく、グループとして営業の現場をどう見守っていたのかが問われます。
上場会社でも、子会社や本社から遠い拠点は、不正が起きやすい場所です。人の目が届きにくく、現場の責任者に権限が集中しやすいからです。本社から見えにくい現場ほど、コンプライアンス部門や内部監査が実際に足を運び、取引や顧客との接点を直接確かめる。地味ですが、この作業が欠かせません。報告書や数字を本社で眺めているだけでは、現場で何が起きているかは分からないのです。
まとめ
- 金融庁がプルデンシャル生命への業務停止命令に向けて最終調整。営業自粛中にも「自粛破り」や新たな金銭詐取が起きていた
- 34年間で関わった社員ら107人、被害顧客約500人。毎年3人以上が関わる「見つからない構造」が続いていた
- 営業自粛も事前承認も、統制の「整備」。現場で守られなかったのは「運用」が機能していなかったため
- 親会社にも業務改善命令の見込み。子会社や遠い拠点ほど、内部監査が足を運んで確かめる必要がある
経営陣を入れ替えても、現場に「ルールより数字」の空気が残っていれば、同じことが繰り返されます。報酬制度の見直しと並んで、統制を「運用」まで落とし込めるかどうか。それこそが、この問題の本質だと感じています。ルールは、守られて初めて統制になるのです。
統制を「運用」まで落とし込むには、承認や記録を人の注意だけに頼らず残せる仕組みも必要です。ワークフローや文書管理などのシステム選びでは、要件を伝えると自社に合う製品や開発会社を紹介してくれるサービスを使う方法もあります。
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【出典・参考】
・東洋経済オンライン「【独自】金融庁がプルデンシャル生命に業務停止命令で最終調整、営業社員による金銭詐取のほか情報提供義務違反も認定」(2026年10月2日)
※本記事は公表情報をもとに一般的な考察を目的として作成したものであり、特定の企業の評価や投資判断を推奨するものではありません。数値は出典記事に基づく参考値です。

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