人事・労務の担当者から「キャリアコンサルタントの資格は、取る意味があるのか」と相談されることがあります。採用、評価、異動、休職からの復職、退職面談――人事の仕事は、突き詰めれば「人のキャリアに関わる判断」の連続です。この記事では、キャリアコンサルタントという国家資格が人事実務にどう効くのか、取得までの道筋とコストを含めて、実務目線で整理します。
キャリアコンサルタントとは――2016年に国家資格化
キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法に基づき、2016年4月に国家資格となりました。名称独占資格であり、試験に合格して登録を受けた人だけが「キャリアコンサルタント」を名乗ることができます。登録には5年ごとの更新があり、その間に所定の知識講習・技能講習を受けることが求められます。
「資格がなくても面談はできる」のは事実です。ただ、傾聴や質問の技法、キャリア理論、労働関係法令までを体系的に学ぶ機会は、実務の中ではなかなか得られません。自己流の面談から抜け出す、という意味で、資格の学習そのものに価値があります。
人事実務のどこで効くのか
1. 1on1・評価面談の質が変わる
評価面談が「結果の通知」で終わってしまう会社は少なくありません。相手の話を引き出し、本人が次の行動を自分で決められるように支援する――キャリアコンサルティングの基本的な技法は、そのまま1on1や評価面談に使えます。
2. 休職・復職、退職の場面で判断を誤りにくくなる
メンタル不調による休職や復職、退職の申し出は、人事にとって最も慎重さが求められる場面です。本人の状況を丁寧に聴き取り、制度の説明と本人の意思決定を切り分けて進める力は、トラブルの予防にも直結します。
3. 人的資本開示・IPO準備との相性
上場企業では、2023年3月期以降、有価証券報告書で人材育成方針や社内環境整備方針などの人的資本に関する情報の開示が求められています。キャリア面談の仕組みや、従業員の自律的なキャリア形成の支援は、こうした開示の中身そのものになります。IPOの人事・労務の記事でも触れたとおり、採用と離職の管理は上場準備でも問われるテーマです。
取得までの道筋
- 受験資格:厚生労働大臣が認定する養成講習を修了するか、キャリアコンサルティングに関する一定の実務経験(3年以上など)があることが必要です。人事担当者の多くは、養成講習の修了ルートを選ぶことになります。
- 試験:学科試験(択一式)と実技試験(論述・面接)で構成されます。面接では、ロールプレイでの面談と口頭試問が行われます。
- 登録と更新:合格後に登録を受けて資格者となり、5年ごとに知識講習・技能講習を受けて更新します。
養成講習は通学型のほか、オンラインで完結するコースも増えています。仕事を続けながら学ぶなら、土日や平日夜に受講できるかどうかは大きな判断材料です。
費用と教育訓練給付
養成講習の受講料は講座によって幅がありますが、決して安い金額ではありません。ただし、厚生労働省の教育訓練給付制度の対象となっている講座もあり、雇用保険の加入期間などの要件を満たせば、受講費用の一部が給付されます。給付率や要件は講座の種類と本人の状況によって異なるため、申し込み前にハローワークで確認しておくと確実です。会社として社員の受講を支援する場合は、人材開発支援助成金の活用も検討できます。
講座選びでは、受講料だけでなく、実技(面接)対策の手厚さ、オンラインで受講できる範囲、受講日程の選択肢を比べるのがおすすめです。まずは説明会や質問会で、講座の雰囲気と自分の生活に合うかを確かめてみてください。
まとめ
キャリアコンサルタントは、人事の仕事を「制度の運用」から「人の意思決定の支援」へと一段引き上げてくれる資格です。1on1や評価面談、休職・復職、退職といった場面で効き、上場企業や上場準備企業では人的資本開示の中身にもつながります。費用面は教育訓練給付の対象講座を選ぶことで抑えられる場合があります。まずは説明会で、講座と自分の働き方の相性を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。受験資格・試験内容・給付制度の要件は変更されることがあるため、最新の情報は厚生労働省・試験実施機関・ハローワーク等でご確認ください。

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