人事評価の不満、AIより先に「説明」を

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人事評価の不満、AIより先に「説明」を

人事評価に不満を持つ人が7割を超え、その多くが「伝えても変わらない」と口を閉ざしている──。2026年10月にForbes JAPANが報じた、パーソルキャリアの調査機関「Job総研」による人事評価の実態調査です。数字以上に重いのは、不満を伝えて改善された人がわずか4.6%にとどまるという点で、ここに評価制度の本当の課題が表れていると感じます。人事評価と上場準備の制度づくりに携わってきた立場から、その意味を読み解きます。

調査の要点(Job総研「2026年 人事評価の実態調査」)
・対象は就業中の10〜50代の男女476人。勤め先に人事評価制度があるのは81.3%(387人)
・評価と給与が見合っていないと感じている人は45.5%
・評価に不満を感じたことがある人は73.9%。不満の中身は「評価の基準」「評価する人やその主観」「評価結果の説明や過程」の順
・不満を会社に伝えていない人は69.2%。理由の最多は「伝えても変わらないと思うから」。伝えて改善された人は4.6%
・人事評価へのAI導入に賛成は68.5%。理由の最多は「上司の主観が排除される」
= 不満の矛先は点数そのものより、基準と説明の「運用」に向いている。
目次

「伝えても変わらない」が生む静かな離職

調査によれば、評価制度がある会社で働く人のうち73.9%が評価に不満を感じたことがあり、その69.2%は会社に伝えていません。理由で最も多いのは「伝えても変わらないと思うから」です。実際に伝えて改善されたという人は4.6%しかいないのですから、そう考えるのも無理はありません。

不満を抱えた人の行動は、ほぼ半々に分かれます。昇給や昇格の日をじっと待つ人と、転職を考える人です。調査では不満を持つ人の50.9%が転職を考え、そのうち44.2%が実際に転職しています。掛け合わせると、不満を持つ人のおよそ2割強が実際に会社を去った計算です。社員100人の会社に置き換えれば、評価への不満をきっかけに十数人が辞めていくことになります。

しかも、こうした離職は表に出にくいものです。退職の理由として「評価に納得できなかった」とはっきり伝える人は多くありません。会社に残った人の中にも「あきらめ」が広がっていれば、仕事への意欲は目に見えないところで下がっていきます。採用と育成にかけたコストを考えれば、評価制度は人事の事務手続きではなく、経営の問題だと思います。

不満の正体は「点数」ではなく「運用」

人事評価に携わってきた立場から言うと、不満の中身が「評価の基準」「評価する人の主観」「結果の説明」と、点数そのものより運用に集中している点は示唆的です。低い評価を受けたこと自体よりも、なぜその評価になったのかが分からないこと、職種や部署が違う人と同じ物差しで測られていると感じることが、不信の根にあるのだと思います。

納得感を生む評価運用の基本(例)
・期初:何を期待しているかを言葉にし、本人とすり合わせる
・期中:成果や行動の事実を、その都度記録しておく
・期末:根拠を示して評価を説明し、次の期の期待につなげる
・評価者研修で目線をそろえ、部門をまたいだ調整会議で甘辛のばらつきを確かめる
= 納得感は、手順の積み重ねでしか生まれない。

地味ですが、どれも特別な仕組みではありません。ただ、評価の時期が来てから慌てて思い出しながら点をつける運用では、どうしても直近の印象や声の大きさに引きずられます。期初の期待と期中の記録があってはじめて、期末の説明に根拠が生まれます。

上場準備で人事制度を整えたときも、規程の文言より、評価の結果を本人に説明できる記録が残っているかどうかが問われました。評価は昇給や昇格、ひいては人件費に直結します。制度が規程どおりに運用されているかを確かめられることは、内部統制の観点からも欠かせない土台です。

AIへの期待は、いまの評価への不信の裏返し

一方で、68.5%がAIの導入に賛成し、その理由の1位が「上司の主観が排除される」だったという結果は、AIへの期待というより、いまの評価への不信の裏返しだと受け止めるべきでしょう。「評価基準が明確になる」「社内政治に左右されない」という理由も、裏を返せば、いまはそうなっていないという声です。

ただ、AIに任せても、何を評価するかという基準を決めるのは会社です。基準が曖昧なままAIを入れれば、不透明さが「AIが判断したから」という説明に置き換わるだけになりかねません。AIの判断の根拠を本人に説明できなければ、不信の矛先が上司からAIに移るだけです。

興味深いのは、評価してほしい相手の1位が「直属の上司」、僅差の2位が「上司とAI」で、AI単独は5位にとどまったことです。社員は上司を見限っているわけではなく、上司の評価を支える客観的な材料を求めているのだと読めます。AIが記録や比較を補い、最後に説明するのは人。この組み合わせが、現場の求める現実的な姿なのだと思います。

まとめ

  • 人事評価に不満を持つ人は73.9%。そのうち69.2%は「伝えても変わらない」と会社に伝えておらず、伝えて改善された人は4.6%にとどまる
  • 不満を持つ人のおよそ2割強が実際に転職した計算で、評価制度は離職と人件費に直結する経営の問題
  • 不満の中身は基準・主観・説明という「運用」に集中しており、期初の期待、期中の記録、期末の説明の積み重ねが納得感の土台になる
  • AIへの期待はいまの評価への不信の裏返し。基準を決め、結果を説明するのは会社と上司の役割として残る

評価に唯一の正解はありませんが、説明はできます。不満を口にしても変わらないと社員に思わせてしまっていることこそ、制度の中身より先に見直すべき点なのかもしれません。声を上げれば仕組みが変わると実感できる会社かどうかが問われていると感じます。

評価や面談、キャリアの相談に向き合う人事担当者にとって、キャリアコンサルタントの知識は実務の支えになります。講座は、実技(面接)対策の手厚さや受講日程で比べるのがおすすめです。

【出典・参考】
・Forbes JAPAN「人事評価に7割が不満、AI導入を望む従業員が7割弱に達する理由」(2026年10月11日)

※本記事は公表情報をもとに一般的な考察を目的として作成したものであり、特定の企業の評価や投資判断を推奨するものではありません。数値は出典記事に基づく参考値です。

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