勤務間インターバル、壁は「例外の日」

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勤務間インターバル、壁は「例外の日」

終業から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」の導入率が6.9%にとどまり、義務化の是非が焦点になっている──。2026年10月に時事通信が報じた、労働時間規制の見直しをめぐる議論です。この数字は制度への反対というより、「始業を遅らせても仕事が回る体制」を持てている会社が少ないことの表れだと感じます。人事労務の実務に携わってきた立場から、その意味を読み解きます。

目次

何が議論されているのか──努力義務から義務化へ

勤務間インターバルは、過重労働を防ぐため、2019年に施行された改正労働時間等設定改善法で事業主の努力義務になりました。政府は導入企業を2028年までに15%以上とする目標を掲げていますが、記事によれば2025年の導入率は6.9%です。インターバルの長さに法律の定めはなく、2024年の調査では「11〜12時間未満」が35.8%、「9〜10時間未満」が24.8%と多くなっています。

10月14日の労働政策審議会の分科会では、労働者側の委員が、原則11時間以上の義務化と、実効性を確保するための罰則を求めました。一方、経営者側の委員は、先行して導入した企業では業務の実態に応じた多様な例外が設けられていると説明し、画一的な義務付けは事業運営に支障を生じかねないとして、制度のあり方は各社の労使の判断に委ねるべきだと主張しています。欧州では英国やフランス、ドイツが11時間の休息を義務づけ、違反には罰則もあります。

勤務間インターバルの現状
位置づけ:2019年から事業主の努力義務(改正労働時間等設定改善法)
導入率:2025年は6.9%(政府目標は2028年までに15%以上)
インターバルの長さ:法律の定めなし。「11〜12時間未満」35.8%、「9〜10時間未満」24.8%(2024年調査)
議論:労働者側は原則11時間以上の義務化と罰則、経営者側は労使の判断に委ねるべきと主張
= 義務化の行方にかかわらず、自社の実態を知っておく段階。

11時間を数字に置き換えると

11時間のインターバルを数字に置き換えると、始業が9時なら前日の終業は22時まで。休憩1時間を除けば、1日の実働は最大12時間、所定8時間に対して残業は4時間までです。多くの会社にとって、平常時に引っかかる水準ではありません。

問題になるのは、決算期の締めやシステム障害、イベント対応のような「例外の日」です。その日に翌朝の始業を遅らせられるか、代わりに誰が対応するかが決まっていなければ、制度は機能しません。管理部門でいえば、月次や四半期の締め、給与計算の締め日、株主総会の前後などが典型です。こうした日が年に何日あり、誰に偏っているのかを把握することが、制度設計の出発点になります。

導入の壁は、規程より「繰り下げた後の扱い」

導入の壁は、規程を書くことより、翌日の始業を繰り下げたときの扱いを決めることにあります。繰り下げた時間を勤務したものとみなすのか、終業も繰り下げるのか。前者なら給与は変わりませんが、実労働時間との差をどう記録するかを決める必要があります。後者なら、その日の終業が遅くなり、また次の日のインターバルに影響します。

こうした扱いを、給与計算や勤怠システムの設定まで落とし込まないと、制度は書いただけで終わります。記事で紹介された盛岡市のベアレン醸造所は、11時間の休息を就業規則に明記し、夜11時まで残業した場合は翌日の始業を10時に遅らせています。社長は、誰かが休んでも仕事が回るよう、業務の共有を進めるきっかけにもなったと話しています。制度を、業務の属人化をほどくきっかけにできるかどうかが分かれ目でしょう。

導入前に決めておきたいこと(一般論)
・インターバルの時間(例:11時間)と、対象となる社員の範囲
・始業を繰り下げた時間を「勤務したものとみなす」か、終業も繰り下げるか
・例外とする場面(災害・システム障害など)と、例外を認める手続き
・勤怠システムでの検知と、給与計算への反映方法
= 規程・勤怠・給与の3つをそろえて初めて動く。

義務化を待たずにできる準備

一方で、経営者側が指摘するとおり、業務の実態に応じた例外は必要です。ただ、例外が増えれば制度は形だけになります。義務化の議論を待つより、自社で「例外の日」が年に何日あるのかを勤怠データで確かめておくこと。終業から翌日の始業までの時間を社員ごとに並べれば、どの部署の、どの時期にインターバルが短くなっているかが見えてきます。

中小企業であれば、国の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」も使えます。就業規則の整備や勤怠管理ソフトの導入などが対象で、厚生労働省によれば、令和8年度の交付申請の期限は2026年11月30日です(予算の状況によって早く締め切られることがあります)。導入を考えるなら、早めに要件を確かめておくとよいでしょう。待遇差の説明が求められるようになった同一労働同一賃金の改正は「待遇差は「聞かれたら考える」では遅い」で取り上げました。

インターバルを確かめるには、終業と始業の時刻が正確に記録されていることが前提です。紙やエクセルで勤怠を管理しているなら、まず打刻とその集計を一つの仕組みにまとめるところから始めるのが近道です。詳しくは「給与・労務のクラウド化」で整理しています。

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まとめ

  • 勤務間インターバルの導入率は2025年で6.9%。労政審では義務化の是非をめぐり労使の意見が分かれている
  • 11時間なら、始業9時で終業は22時まで。平常時に引っかかる会社は多くない
  • 問題は締め・障害対応などの「例外の日」。その日の代わりの体制が要る
  • 導入の壁は、始業を繰り下げた後の扱いを、勤怠・給与の設定まで落とし込むこと
  • 義務化を待たず、勤怠データで「例外の日」の数と偏りを確かめておく

義務化の議論がどちらに転んでも、自社の勤怠データで実態をつかんでいれば慌てることはありません。それが、いま管理部門にできる一番の準備だと感じます。

【出典・参考】
・時事通信社「勤務間インターバル、定着せず 導入6.9%、義務化が焦点に」(2026年10月27日)
・厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」

※本記事は公表情報をもとに一般的な考察を目的として作成したものであり、特定の企業の評価や投資判断を推奨するものではありません。数値は出典記事に基づく参考値です。

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