取引先に預けた型、無償保管は法令違反

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取引先に預けた型、無償保管は法令違反

発注の予定もない段ボールの印版や木型を、取引先に無償で預けたままにしていた──。2026年10月に共同通信が報じた、王子ホールディングスの連結子会社、王子コンテナーに対する公正取引委員会の勧告です。現場では「昔からそうしている」で済まされがちな慣行が、大手グループの子会社の法令違反として認定されたことに意味があると感じます。コーポレート実務に携わってきた立場から、その意味を読み解きます。

目次

何が問題とされたのか──9610個の型と140業者

公取委によると、王子コンテナーは2024年6月から2025年11月までの約1年半、製品を長期間発注しないのに、段ボールに企業ロゴを印刷するための印版や、裁断に使う木型、金型を計9610個、140の業者に保管させていました。単純に割れば1業者あたり約69個です。

同社はすでに127業者に、費用の一部にあたる約341万円を今年7月までに支払っていますが、公取委は残りの額も速やかに算定して支払うよう求めました。違反行為は今年1月に中小受託取引適正化法が施行される前のものだったため、改正前の下請法が適用されています。印版の無償保管をめぐる勧告は、これが2件目とのことです。

勧告には罰金のような金銭的な制裁はありませんが、公取委は勧告した事業者の名前と違反の内容を公表します。今回のように親会社の名前とともに報じられれば、取引先や採用への影響も小さくありません。約341万円という支払額以上に、信用の面での負担が重いと感じます。

公取委の勧告(2026年10月22日)の要点
対象:王子コンテナー(王子HDの連結子会社)
期間:2024年6月〜2025年11月
内容:長期間発注しない印版・木型・金型 計9610個を、140業者に無償で保管させた
対応:127業者に約341万円を支払い済み。残りの額も速やかに算定し支払うよう勧告
適用:違反行為が取適法の施行(2026年1月)前のため、改正前の下請法
= 「預かってもらうのが当たり前」が、法令違反と認定された。

誰も「お願い」をした自覚がないまま起きる

この問題の難しさは、誰も「お願い」をした自覚がないまま起きる点です。型は発注のたびに使うもので、取引先の倉庫にあるのが当たり前になっている。購買の担当者が替われば、何がどこに何個あるのかを把握している人がいなくなります。

下請法では、発注側が取引先に金銭や役務などの提供を求め、取引先の利益を不当に害することを禁じてきました。型を無償で保管させ続けることは、保管場所や管理の手間という「役務」をただで提供させているのと同じだ、という整理です。発注書に書かれた取引ではなく、その周りに積み重なった慣行が問われている点に注意が要ります。

防ぐには、型の所有者・保管場所・最後に発注した日を台帳で管理し、一定期間使っていない型は廃棄するか、引き取るか、保管料を払うかを定期的に決める仕組みが要ります。地味ですが、この台帳を持っていない会社は少なくないと思います。

型の管理台帳に持たせたい項目(一般論)
・型の所有者(自社か、取引先か)と、対象の製品・品番
・保管している取引先と保管場所
・最後に発注した日と、今後の発注予定の有無
・一定期間を過ぎた型の扱い(廃棄・引き取り・保管料の支払い)と、その決定日
= 「最後に使った日」が分かれば、見直しの対象が自動的に浮かぶ。

台帳は、作って終わりにしないことが大切です。購買部門だけに任せず、年に一度は内部監査や法務が「使っていない型が残っていないか」を確かめる。グループ会社が多い場合は、親会社が子会社にも同じ確認を求める。こうした点検の流れまで決めておくと、担当者が替わっても仕組みとして残ります。

帳簿に出てこない「モノの置き場所」

もう一つ気になるのは、支払期日や発注書面のように数字や書類で確かめられる項目に比べ、型の保管のような「モノの置き場所」は帳簿に出てこないという点です。会計監査でも内部監査でも見えにくく、取引先からの申し出がなければ表に出ません。

支払遅延であれば、支払データを見れば分かります。ところが型の保管は、自社の帳簿にも倉庫にも記録が残らず、取引先の倉庫にだけ存在します。内部監査で下請法の対応を確かめるときも、発注書面の記載や支払期日のチェックで終わりがちです。購買部門に「取引先に預けているものの一覧を出してください」と聞いてみるだけでも、実態に近づけるはずです。

「下請法」から「取適法」へ──洗い直しのきっかけに

一方で、受託側の中小企業にとって、取引を続けたい相手に保管料を請求するのは簡単ではありません。だからこそ、発注する側が自ら棚卸しをして申し出ることが求められます。

2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)では、下請法の名称が変わっただけでなく、取引先から価格の協議を求められたのに応じず一方的に代金を決めることの禁止、手形払いの禁止、資本金に加えて従業員数による適用基準の追加、発荷主が運送を委託する取引の追加などが盛り込まれました。対象となる取引や相手が広がった今こそ、型の保管のような古い慣行も含めて見直す好機です。独占禁止法をめぐる別の事例は「ビール4社への強制調査」でも取り上げました。

まとめ

  • 王子コンテナーは、長期間発注しない印版・木型・金型9610個を140業者に無償で保管させたとして、公取委から勧告を受けた
  • 型の無償保管は、誰も「お願い」をした自覚がないまま慣行として続きやすい
  • 防ぐには、型の所有者・保管場所・最後の発注日を台帳で管理し、定期的に扱いを決める仕組みが要る
  • 「モノの置き場所」は帳簿に出てこず、会計監査や内部監査でも見えにくい
  • 取適法の施行を機に、発注側から棚卸しをして申し出る姿勢が求められる

法律の名前が変わった今、自社の取引慣行を一度洗い直せるかが問われていると感じます。

【出典・参考】
・共同通信「王子HD子会社が下請法違反 段ボール会社、印版無償保管で」(2026年10月22日)
・公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」

※本記事は公表情報をもとに一般的な考察を目的として作成したものであり、特定の企業の評価や投資判断を推奨するものではありません。数値は出典記事に基づく参考値です。

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