GMOインターネットグループが、週1日の在宅勤務推奨も含めて、在宅勤務を完全廃止した、というニュースがありました。2020年1月、日本で一番早く約4,000人を在宅勤務に切り替えた会社が、約6年半で、はっきりと幕を引いた形です。人事・労務に携わる立場として、この流れはよく理解できます。同時に、考えるべき副作用もあります。出社回帰の設計について、実務目線で整理します。
「一番早く始めた会社」が、一番はっきり幕を引いた
GMOは、コロナ禍の2020年1月、国内で最も早くグループ全体を在宅勤務に切り替えた会社です。その後、2023年2月に原則出社へ移行し、それでも採用や従業員のQOLを考慮して、週1日の在宅勤務推奨を残していました。今回、その最後の推奨も廃止。代表は「在宅で生産性が上がる人がいる一方、時間当たりのタイピング数は減った」「トータルで在宅勤務はマイナス」と説明しています。個別の事情がある場合は、グループ各社の判断に委ねるとのことです。
リモート適性の「個人差」は、想像以上に大きい
リモートワークをめぐって、実務で感じるのは、適性の個人差が非常に大きい、ということです。
リモートでも自律的にコミュニケーションを取り、成果を出せる人がいます。その一方で、リモートだと孤立して、引きこもってしまう人もいます。同じ制度の下でも、人によって働き方の質がまるで変わってしまう。そして、一律の制度で運用すると、後者の層のパフォーマンスやメンタル面に課題が出やすいのが実情です。「トータルでマイナス」という判断の背景には、この個人差を、一律の制度では吸収しきれなかった、という現実があるのだと思います。
テクノロジーに最も強いはずのIT企業が、対面を選ぶ
注目したいのは、これがGMO一社の話ではない、という点です。国内では、LINEヤフーが実質的なフルリモート勤務を撤廃し、出社頻度を引き上げました。楽天も原則週4日出社を打ち出しています。そして、海外のIT大手も、相次いで出社を求めています。
リモートツールを自ら作り、テクノロジーに最も精通しているはずのIT企業が、対面を選ぶ。これは象徴的です。結局のところ、対面のほうがコミュニケーションのストレスや認識の相違が少なく、価値創出につながる、と判断しているからだと思います。偶発的な議論、ちょっとした認識合わせ、信頼関係の構築。リモートで失われがちなものの価値を、テクノロジーの最前線にいる企業ほど、痛感しているのかもしれません。
ただし、出社回帰には「副作用」がある
もちろん、出社回帰には副作用もあります。リモート前提で地方に移住した人や、育児・介護と両立してきた人にとっては、出社の原則化は大きな負担になります。制度変更が人材流出につながるリスクも、現実にあります。実際、フルリモートを撤廃したLINEヤフーグループでは、自己都合退職が前年度比65%増となったことが報じられています。
一律ではなく、「業務特性×個人適性」で設計する
だからこそ、一律に「出社か、在宅か」で線を引くのではなく、業務特性や個人の適性に応じた、柔軟な設計ができるかどうかが問われます。
対面のメリットを取り戻しながら、リモートで力を発揮できる人の選択肢も残す。対面での協働が価値を生む業務は出社を軸にし、集中作業が中心の業務や、個別の事情がある人には、リモートの余地を残す。GMOも、個別事情はグループ各社の判断としており、完全に一色に染めるわけではないようです。出社と在宅、どちらが正解という話ではなく、その会社の業務と人に合わせて、どうバランスを取るか。ここが、これからの人事制度の、腕の見せどころだと感じています。
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※本記事は報道をもとにした筆者個人の見解です。引用した内容の詳細は、出典元をご確認ください。

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