「アンチオルカン」という発想を扱った記事を読みました。オルカン(全世界株式インデックスファンド)のように、全員がAIの提示する最適解に従えば、そこに差はほとんど生まれない――だから、あえて計算式の外側にある偏りや執着に賭ける、という提案です。この発想は、個人の生き方だけでなく、企業経営にもそのまま当てはまると感じています。AIが最適解を量産する時代の「差別化」について、実務の視点から考えてみます。
経営判断も「成功モデルの模倣」へ収束していく
AIが最適解を量産する時代には、経営判断もまた、成功しているモデルを分析して模倣する方向に向かっていくと感じています。
記事が指摘するように、全員がAIの提示する最適解に従えば、そこに差はほとんど生まれません。似たようなポートフォリオで人生を設計するのと同じで、企業もまた「うまくいっている会社のやり方」を学習し、似たような戦略、似たようなプロダクトへと収束していく。100人がAIを使って100点の正解を目指す世界では、100点そのものは差別化にならない、という記事の指摘のとおりです。均質化のリスクは、個人だけでなく、企業経営にも当てはまります。
同じモデルを模倣しても、「質」は必ず変わる
ただ、実務の感覚として思うのは、同じモデルを模倣しても、質は必ず変わってくる、ということです。
今その会社が持っているリソース。組織の文化。そして、どんな困難を、どう乗り越えてブレークスルーしてきたのか。その固有の過程が、表面的には同じに見える戦略にも、まったく異なる厚みを与えます。同じ戦略を掲げた2つの会社があっても、修羅場をくぐってたどり着いた会社と、資料を写しただけの会社では、実行の質がまるで違う。成功モデルの「答え」はコピーできても、そこに至る「文脈」はコピーできないのです。
最後に問われるのは「顧客にどう選んでもらうか」
だからこそ、似たようなプロダクトが並ぶ市場で、最後に問われるのは、「顧客にどう選んでもらうか」だと思っています。
機能や価格が均質化していく中で、選ばれる理由になるのは、スペック表の差ではありません。その企業ならではのこだわり、偏愛、譲れない価値観。記事の言葉を借りれば、「説明しにくい熱量」です。AIが切り捨てがちなムダや偏りにこそ、人間の――そして企業の――希少性が残る。「なぜか、この会社から買いたい」「理屈ではないが、ここが好きだ」。そう思わせる何かを持てるかどうかが、均質化した市場での分かれ目になっていきます。
効率はAIに任せ、「どこで色を出すか」を人が決める
結局のところ、これからの経営における差別化の核心は、使い分けにあるのだと思います。
効率的な部分は、AIに任せればいい。市場分析も、資料作成も、定型業務も、AIは速く正確にこなしてくれます。その上で、どこで自分たちの色を出すかを、人が決める。記事にあった「効率を計算するのはAIに任せ、最後にどこを裏切るかを自分で決める」という言葉は、経営にもそのまま通じます。全部をAIに委ねれば、平均に収束する。全部を人がやれば、非効率で戦えない。AIで固めた土台の上に、自社にしかない偏りを、意図して乗せる。その設計ができる会社が、均質化の時代に、選ばれ続けるのではないでしょうか。
参考・出典
※本記事は、公開された記事を読んで感じたことをもとにした筆者個人の見解です。
