会社が配慮すべきことは、増え続けている

企業の5割が、猛暑・酷暑で業務に支障をきたしている――そんな調査結果が報じられました。熱中症対策の義務化も始まっていますが、それ以前に感じるのは、会社が配慮すべき事項が、ここ数年で本当に増えた、ということです。労務の実務に携わる立場から、この「増え続ける配慮」と、その運用について考えてみます。

目次

暑さは「個人の我慢」から「企業が管理する課題」へ

調査(帝国データバンク)では、企業の5割が猛暑・酷暑で業務に支障をきたし、建設業では7割を超えました。そして、87.8%が何らかの猛暑対策を実施しており、その最多が「水分・塩分補給品の支給」(61.2%)とのことです。

約5割
猛暑・酷暑で業務に支障
(建設は7割超)
87.8%
何らかの猛暑対策を実施
61.2%
最多は水分・塩分補給品の支給
出典:帝国データバンク調査(報道より)

数字が示す通り、暑さはもはや、個人が我慢する問題ではありません。企業が組織として管理すべき、労働環境の課題になりました。実際、2025年6月からは、職場の熱中症対策が義務化され、すべての企業を対象に、熱中症の恐れのある労働者への対応手順の作成・周知が求められています。「気合で乗り切る」時代は、制度の面でも、はっきりと終わったのです。

この10年で積み上がった、「企業に求められる配慮」

労務の実務から見ると、この10年ほどで、企業に求められる配慮は大きく積み上がっています。

ハラスメント防止。メンタルヘルスケア。育児・介護との両立支援。多様な働き方への対応。そして今回の、熱中症対策。どれも、従業員を守るために必要なことです。一つひとつに、異論はありません。けれど、現場でこれらを運用する管理部門の負荷は、確実に増しています。規程を作り、周知し、研修を行い、相談に対応し、記録を残す。配慮が一つ増えるたびに、その裏側では、運用の仕事が着実に積み上がっているのです。

「やればいい」ではなく、「実効性」が問われる

そして、重要なのは、これらが「やればいい」ものではなく、実効性が問われる、という点です。

熱中症対策で言えば、水分・塩分補給品を配るだけでは、対策として不十分です。作業時間の見直し。休憩の確保。服装規範の緩和。危険な暑さの日には、外回りの訪問をオンラインに切り替える。そうした、業務プロセスそのものの見直しにまで踏み込んで、はじめて実効性のある対策になります。物品の支給は入り口にすぎず、本丸は「働き方をどう変えるか」なのです。これはハラスメント対策やメンタルヘルスケアでも同じで、窓口を置いただけ、研修をやっただけでは意味がなく、実際に機能しているかが問われます。

制度を増やすなら、運用できる体制も

配慮すべき事項が増えていくのは、社会が成熟している証でもあります。働く人が、我慢を強いられず、安全に、健やかに働ける方向へ、確実に進んでいる。それ自体は、歓迎すべきことです。

ただ、その分だけ、現場を回す人手とリソースが必要になります。制度を増やすと同時に、それを運用できる体制をどう作るか。ここが、企業にとっての次の課題ではないでしょうか。配慮の項目だけが増えて、運用する管理部門が疲弊してしまっては、制度は形骸化します。仕組みで負荷を減らす、外部の力を借りる、優先順位をつける。「従業員を守る仕組み」と「それを回す体制」を、セットで設計する。これからの労務管理は、その両輪で考える必要があると感じています。

参考・出典

本記事は報道・公表資料をもとにした筆者個人の見解です。引用した数値の詳細は、出典元をご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次