「出社か在宅か」に「いつ出社」を足す

リモート勤務のデメリット1位が「コミュニケーションの取りにくさ」というのは、実感として本当にその通りだと感じます。2026年8月にITmediaビジネスオンラインが報じた、リモート勤務に関するアンケート調査の結果です。この調査結果を、労務の実務に携わる立場から読み解きつつ、これからの働き方について考えてみます。

目次

数字で見る、リモート勤務の実態

まず、調査結果の要点を整理します。現在の勤務スタイルは、出社系(完全出社+ほぼ出社)が48.0%、在宅系(完全在宅+週1回以上在宅)が52.0%と、ほぼ二分されています。そのうえで、メリットとデメリットの1位が、それぞれ象徴的でした。

メリット1位
通勤時間・コストの削減
57.3%
2位 子育て・介護との両立16.3%、3位 集中して仕事10.7%を大きく引き離す
デメリット1位
コミュニケーションの取りにくさ
30.7%
2位 仕事とプライベートの切り替え28.7%、3位 勤怠・労務管理15.7%

「お互い様」の、コミュニケーションの難しさ

デメリット1位の「コミュニケーションの取りにくさ」は、多くの人が実感するところでしょう。ここで注目したいのは、この難しさが一方通行ではない、という点です。

出社している本社側と、リモート側。その双方が「やりとりしづらい」と感じています。リモート側だけが困っているのでも、本社側だけが不便なのでもない。この非対称ではない、お互い様の難しさこそが、リモートの本質的な課題だと思います。「ちょっといいですか」と気軽に声をかけられない、相手の状況が見えない、温度感が伝わらない──こうした摩擦は、どちらの側にも等しく生じます。だからこそ、片方の努力だけでは解決しにくいのです。

それでも通勤から解放されたい、という切実さ

一方で、リモートの最大のメリットが「通勤時間・コストの削減」であることも、痛いほどよく分かります。57.3%という数字が、その切実さを物語っています。

夏の猛暑の中、汗だくで満員電車に揺られる通勤は、それだけで一日の体力と気力を削っていきます。コミュニケーションの課題を差し引いてでも、この負担から解放されたい。そう願う気持ちは、多くの人に共通するものでしょう。実際、この調査でも「猛暑・降雪時の移動負担がない」ことをメリットに挙げる声がありました。通勤は、単なる移動ではなく、心身への負荷そのものなのです。

気づき──つらいのは「通勤」ではなく「ピーク」

ここで、最近気づいたことがあります。出社時間を少しずらすだけで、いつもの満員電車とは混み具合がまったく違うのです。

ほんの30分、1時間の差で、車内の圧迫感が大きく変わる。この体験は、通勤のつらさの正体について、重要なヒントを与えてくれます。

通勤そのものが等しくつらいのではない。
特定のピーク時間に、人が集中していることが、つらさの多くを生んでいる。
だとすれば、解くべき問題は「通勤の有無」だけではなく、「通勤の時間帯」にもある。

通勤のつらさの多くは、特定のピーク時間に人が集中していることに起因している。ラッシュアワーの1〜2時間に、あまりに多くの人が同じ電車に乗ろうとするから、あの圧迫感が生まれる。逆に言えば、その集中さえ緩和できれば、通勤の負担は大きく変わるということです。

「出社か在宅か」に加えて、「いつ出社するか」

だとすれば、「出社か在宅か」という二択だけでなく、「いつ出社するか」という時間の分散にも、もっと目を向けるべきではないでしょうか。

これまでの議論:場所の選択
「出社か、在宅か」。働く場所をめぐる二択。コミュニケーションと通勤負担が、トレードオフになりがち
加えるべき視点:時間の分散
「いつ出社するか」。時差出勤・フレックスでピークを避ける。出社しつつ通勤負担を下げる第三の道

時差出勤やフレックスタイムを、社会全体でもっと当たり前にすれば、通勤の負担は大きく軽減されます。そしてそれは、リモートで失われがちな対面のコミュニケーションを取り戻すことにもつながります。「コミュニケーションの質を保つために出社は必要、でも通勤のピークは避けたい」──この一見両立しにくい2つの願いを、時間の分散が同時に満たしてくれる可能性があるのです。

これからの働き方改革のテーマとして

コミュニケーションの質を保つために出社は必要、でも通勤のピークは避けたい。この両立は、企業単位の制度だけでなく、社会全体でラッシュアワーのあり方を見直すことで実現できるはずです。

個々の企業がフレックスや時差出勤を導入することはもちろん有効ですが、それが一部の会社にとどまれば、ピークの分散効果は限られます。多くの企業が足並みをそろえ、社会全体として通勤時間帯を分散させることができれば、効果は格段に大きくなります。在宅制度の充実と並行して、ピーク時間の分散という視点も、これからの働き方改革の重要なテーマになると感じています。

労務の実務の観点でも、時差出勤やフレックスタイム制の導入は、就業規則の整備や労使協定など、対応すべき論点があります。しかし、従業員の負担軽減と、対面コミュニケーションの確保を両立させる手段として、検討する価値は十分にあります。「場所」だけでなく「時間」も、働き方を設計する重要な変数だという視点を、企業も社会も持つべき時に来ているのではないでしょうか。

まとめ

  • リモート勤務のデメリット1位はコミュニケーションの取りにくさ(30.7%)。本社側・リモート側の双方が感じる「お互い様」の難しさが本質
  • メリット1位は通勤時間・コストの削減(57.3%)。猛暑や満員電車の負担から解放されたいという切実さがある
  • 通勤のつらさの多くは、特定のピーク時間への集中に起因する。出社時間を少しずらすだけで混雑は大きく変わる
  • 「出社か在宅か」に加え「いつ出社するか」という時間の分散を。時差出勤・フレックスの社会的な普及が、通勤負担の軽減と対面の両立を可能にする

リモートか出社か、という議論は、ともすれば二者択一になりがちです。しかし、通勤のつらさの正体がピークへの集中にあるなら、「時間をずらす」という第三の選択肢が見えてきます。場所の柔軟性と時間の柔軟性。その両方を組み合わせることで、働く人の負担を減らしながら、組織のコミュニケーションも守れる。そんな働き方の設計を、これからの重要なテーマとして考えていきたいところです。

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【出典・参考】
ITmediaビジネスオンライン「『在宅勤務の制度』で改善してほしい企業 リモート勤務のメリット・デメリット調査」(2026年8月11日、カオSEARCH調べ)

※本記事は公表情報をもとに一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の勤務制度の設計を保証するものではありません。時差出勤・フレックスタイム制の導入にあたっては、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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