出戻り採用は「アリ」でも人を選ぶ

出戻り転職、いわゆるブーメラン採用は、人事に携わった立場から言えば「アリ」です。2026年8月にForbes JAPANが報じた記事も、かつて在籍した企業に戻ることが有力なキャリア戦略になり得ると論じていました。この見立てには、実務の実感としても同意します。ただし、誰でも歓迎というわけではなく、人を選ぶ、というのが正直なところです。コーポレート実務、とりわけ人事の視点から、この論点を掘り下げます。

目次

なぜ出戻り採用は「アリ」なのか

メリットは、記事が指摘する通りだと感じます。出戻り社員には、他の中途採用者にはない、明確な強みがあります。

組織のDNAを理解している
企業文化、暗黙の了解、意思決定が実際に行われるプロセスをすでに熟知している。初日から戦力になれる
オンボーディングのコスト減
システム習得や人間関係の構築に費やす時間を大幅に削減できる。立ち上がりが圧倒的に速い
カルチャーフィット済み+新しい視点
相性は確認済みで、そこに他社で培った新鮮な視点が加わる。「知っている強み」と「新しい価値」の両取り

組織のDNA、つまり企業文化や暗黙の了解、意思決定のプロセスをすでに理解しているため、初日から戦力になる。オンボーディングにかかる時間とコストを大幅に削減でき、カルチャーフィットも確認済みです。そこに他社で培った新しい視点が加わるなら、企業にとっては理想的な採用です。去ったときと同じ人物ではなく、外で経験を積んで戻ってくる。その付加価値に対して、企業は相応の待遇を用意する用意もあります。

実際、給与計算サービス大手ADPのデータでも、2025年3月の新規採用者に占める出戻り社員の割合は35%に達したとのことです。前年同月の31%から上昇しており、この流れは確かなものになっています。人手不足で採用競争が激化するなか、「すでに自社を知っている即戦力」の価値が、あらためて見直されているのです。

それでも「人を選ぶ」──重要なのは去り際

ただし、冒頭で述べた通り、出戻りは誰でも歓迎というわけではありません。人事の実感として重要なのが、記事も指摘する「どのように辞めたか」です。

迎え入れやすい辞め方
円満に、適切な引き継ぎと予告期間を守って去った人。プロとしての関係を保って退職した人。迎える側も安心できる
慎重にならざるを得ない辞め方
無責任な辞め方をした人、周囲との関係を壊して出ていった人。いくらスキルがあっても、受け入れには慎重になる

円満に、適切な引き継ぎと予告期間を守って去った人は、迎え入れる側も安心できます。逆に、無責任な辞め方をした人や、周囲との関係を壊して出ていった人については、いくらスキルがあっても、慎重にならざるを得ません。

ここは、強調しておきたい点です。採用する側は、その人がどう去っていったかを、驚くほどよく覚えているものです。辞めるときの態度、引き継ぎの丁寧さ、周囲への配慮。そうした「去り際の振る舞い」は、想像以上に人の記憶に残ります。そして、出戻りの可能性を考えたとき、その記憶が、扉を開くか閉じるかを分けるのです。

もう一つの基準──「進化しているか」

そして、もう一つ選ぶ基準になるのが、記事にある「進化しているか」という点です。

懐かしさや馴れ合いで戻ってくる人ではなく、外の世界で明確に成長し、退職時とは違う価値を持ち帰ってきた人。採用する側が知りたいのは、元の職場の雰囲気を懐かしんでいるかどうかではありません。他社での経験を経て、退職時よりも高まった価値は何か、という点です。離れていた期間に何を学び、どう成長し、いまどんな独自の価値をもたらせるのか。それを語れる人であれば、出戻りは本人にとっても組織にとっても、ウィン・ウィンになります。

逆に言えば、変化のない出戻りは、うまくいきません。本人が成長していなければ、あるいは会社側の課題(その人が辞めた原因)が解決していなければ、かつての不満に再び直面するだけです。出戻りが成功するのは、本人か会社か、あるいはその両方が、実際に変化している場合に限られます。

だから「辞め方」は、将来の選択肢を左右する

結局のところ、出戻りが最強のキャリア戦略になり得るのは、去り際が美しく、外で確かに成長した人に限られます。この2つの条件を、採用する側は見ています。

この事実は、いままさに転職を考えている人、あるいは今の会社を辞めようとしている人にとって、重要な示唆を含んでいます。今いる会社をどう辞めるかは、単にその場の問題ではなく、将来の自分の選択肢を残すという意味でも、とても大切なのです。

辞めるときに関係を壊してしまえば、その扉は閉じます。逆に、円満に、プロフェッショナルとして去っておけば、たとえその時は戻るつもりがなくても、将来「戻る」という選択肢が手元に残ります。キャリアは一本道ではなく、ジグザグに進むもの。だからこそ、一つひとつの職場との縁を、去り際まで大切にしておくことが、巡り巡って自分の可能性を広げます。管理部門やバックオフィスのような、専門性が高く、人的ネットワークが効く領域であれば、なおさらこの「去り際の資産」は大きな意味を持ちます。

転職やキャリアの選択肢を具体的に考えるなら、自分の市場価値や、どんな求人があるのかを把握しておくことが第一歩になります。特に経理・財務・人事・法務といった管理部門の専門職は、専門特化型のエージェントを活用することで、自分の経験に合った機会に出会いやすくなります。

まとめ

  • 出戻り採用は「アリ」。組織のDNA理解で初日から戦力、オンボーディングコスト減、カルチャーフィット済みに他社の新視点が加わる。ADPでは新規採用の35%が出戻り社員
  • ただし人を選ぶ。最重要は「どう辞めたか」。円満に引き継ぎと予告期間を守った人は安心だが、無責任・関係を壊した辞め方は慎重に。採用側は去り際を驚くほど覚えている
  • もう一つの基準は「進化しているか」。懐かしさや馴れ合いでなく、外で成長し違う価値を持ち帰った人なら、双方にとってウィン・ウィン
  • だから、今の会社をどう辞めるかは、将来の選択肢を残すうえで極めて重要。去り際の美しさが、次の扉を開く

出戻り転職は、キャリアの流動性が高まる時代の、新しい選択肢のひとつです。ただし、それが機能するのは、去り際が美しく、外で確かに成長した人に限られる。この条件を裏返せば、日々の仕事ぶりと、退職時の振る舞いこそが、将来の自分の可能性を作っているということです。目の前の縁を大切にすることが、巡り巡って最強のキャリア戦略につながる。この記事は、そんな示唆を与えてくれていると感じます。

【出典・参考】
Forbes JAPAN「なぜ『出戻り転職』が最強のキャリア戦略になり得るのか」(2026年8月8日、Bryan Robinson)

本記事は公表情報および一般的な実務上の考え方をもとに作成したものであり、個別の採用や転職の成否を保証するものではありません。一部にプロモーションを含みます。

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