入社手続きで「雇用保険被保険者証を出してください」とお願いすると、「どこにあるかわからない」「もらった覚えがない」と返ってくることは珍しくありません。被保険者証は普段使う書類ではないので、転職のときになって初めて探す人が多いからです。この記事では、被保険者証をなくしたときに、本人と会社がそれぞれ何をすればよいかを整理します。結論を先に言えば、必要なのは証そのものより「被保険者番号」です。再交付を申請する前に、番号がわかる書類やマイナポータルで確かめられないかを先に当たるのが近道です。
被保険者証は「番号を引き継ぐ」ための書類
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入したときにハローワークが交付する書類で、11桁の被保険者番号が書かれています。この番号は、転職しても原則として同じものを使い続けます。新しい会社が雇用保険被保険者資格取得届を出すときに前の会社と同じ番号で届け出ることで、前職までの加入期間がつながり、失業給付(基本手当)や育児休業給付、教育訓練給付の要件を判断するときの期間に反映されます。
裏を返せば、番号がわからないまま届出をすると、照合ができずに新しい番号が付き、記録が分かれてしまうおそれがあります。会社が入社時に被保険者証を求めるのは、この番号を正しく引き継ぐためです。
再交付の前に、番号がわかるものを探す
被保険者証が見つからなくても、番号は別の書類や仕組みで確かめられることがあります。再交付は窓口に出向くか郵送で手続きが必要なので、まずは次の順に当たってみるのが効率的です。
なお、ハローワークは電話では被保険者番号の検索や回答をしていません。番号を知りたいときは、窓口か書面での手続きになる点を本人に伝えておくと、問い合わせの空振りを防げます。
ハローワークでの再交付の手続き
再交付は「雇用保険被保険者証再交付申請書」で申請します。様式はハローワークの窓口のほか、厚生労働省のサイトからも入手できます。群馬労働局の案内をもとに、手続きの要点をまとめると次のとおりです。
・郵送:申請書、本人確認書類の写し、返信用封筒(記録の残る郵便の切手を貼付)を送る。交付まで2週間程度
・電子申請:e-Govでも申請できる
・会社などが代理で申請するときは委任状が必要。申請書の氏名欄は本人の氏名
・会社が本人に渡す前に紛失した場合は、委任状は不要
番号がわからない場合は、申請書に前職の事業所名や所在地などを書き、職歴から本人の記録を探してもらいます。過去の職歴から番号が確認できないときは再交付できないとされているので、勤めていた会社名・所在地・在籍期間をメモにして持っていくと手続きが進みやすくなります。
会社側の実務──入社時に「ない」と言われたら
会社にとって大事なのは、被保険者証がそろうのを待って資格取得届を遅らせないことです。雇用保険の資格取得届は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに提出します。資格取得届にはマイナンバーの記載も必要です。入社手続きの案内には、被保険者証がない場合の探し方(上の①〜③)を最初から書いておき、それでも見つからない人には早めにハローワークでの確認を勧めます。番号がわからないまま提出するしかない場合は、前職の会社名を資格取得届の備考欄に記載しておけば、取得できることが大半です。それでも取得できない場合は会社名の記載が誤っている(グループ会社の子会社で取得しているが、本人は親会社だと勘違いしていた)か、実は未加入だったというケースもあります。
もう一つは、自社で被保険者証を預かる運用をしている場合の管理です。資格取得の手続き後に交付される被保険者証を会社が保管し、退職時にまとめて渡す会社は少なくありません。その場合は、保管場所と受け渡しの記録を決めておかないと、退職者から問い合わせが来たときに見つからない、ということが起こります。入社時に本人へ渡して「転職のときに必要になる」と一言添えるか、預かるなら退職時の書類一式に必ず入れる。地味ですが、ここを決めておくだけで次の会社での手続きがずいぶん楽になります。入退社の流れ全体は「入社後の手続きガイド」「退職オペレーションを部署横断で整理する」でも整理しています。
入退社の書類や番号の管理を表計算や紙で回していると、こうした受け渡しの記録が担当者の手元に散らばりがちです。労務手続きと従業員情報をクラウドで一元管理する方法もあります。
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まとめ──探すべきは「証」より「番号」
- 被保険者証は、転職先で同じ被保険者番号を引き継ぎ、加入期間をつなぐための書類
- なくしたら、まず前の会社・手元の書類・マイナポータルで番号を確かめる。ハローワークは電話では番号に答えない
- 再交付は「雇用保険被保険者証再交付申請書」で、窓口・郵送(2週間程度)・e-Govのいずれか。代理申請は委任状が必要
- 会社は資格取得届(翌月10日まで)を遅らせない。預かる運用なら保管と受け渡しの記録を決めておく
被保険者証は、なくしても困るのは何年も先の転職のときです。だからこそ、入社と退職の手続きの中に「番号を確かめる」「本人に渡す」という一手間を組み込んでおくことが、本人にとっても次の会社にとっても一番の予防策になります。
【出典・参考】
・群馬労働局「雇用保険被保険者証の再交付についてご案内」
・厚生労働省「労働者の皆様へ(雇用保険給付について)」
※本記事は執筆時点の制度をもとに一般的な実務の流れを解説したものです。個別の判断は管轄のハローワークや専門家にご確認ください。

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