40代転職は増加、でも下がるのは40代だけ

40代の転職が、全世代で最も伸びている。この事実は、人手不足の時代を象徴していると感じます。2026年8月にITmediaビジネスオンラインが報じた、転職市場に関する調査結果です。かつての「35歳転職限界説」は、もはや過去の話になりました。ただ、その数字の裏には、40代ならではの厳しさも見え隠れします。労務の実務に携わる立場から、読み解きます。

目次

数字で見る、40代転職の「光と影」

まず、調査結果を確認します。転職サービス「doda」のレポートによると、40代の転職者数は、直近3年で20代・30代を上回るペースで増加し、全世代のなかで最も大きな伸びを記録しています。企業が、即戦力を求めて、40代に門戸を開いている表れです。

光:転職者数は全世代で最大の伸び
40代の転職者数は直近3年で最も大きく増加。「35歳限界説」は過去のものに。門戸は確実に広がった
影:年収を下げているのは40代だけ
20代・30代がプラス転職を実現するなか、40代の平均年収はほぼ横ばい。前職比でもマイナスが残る

一方で、見逃せないのが、40代だけが転職後の年収を下げている、という点です。20代・30代がプラス転職を実現しているなかで、40代の平均年収はほぼ横ばい。前職との比較でも、下がっている傾向にあります(下がり幅そのものは、以前より縮小しているようですが、依然としてマイナスです)。転職の門戸は広がったのに、待遇面では厳しさが残る。この非対称性には、40代特有の事情があるように思います。

経験が評価される年代の、落とし穴

40代は、これまでの経験や過去の成功体験が評価される年代です。企業側も「即戦力」として、その人が積み上げてきた実績に期待して採用します。これは、40代の強みであり、転職者数が伸びている理由でもあります。

ただ、ここに落とし穴があると感じています。過去の成功体験が大きいほど、ある錯覚に陥りやすくなるのです。

「あの会社で、あの環境だったからできたこと」を、
自分個人の実力だと錯覚してしまう。
看板や組織の力を、自分の力と混同してしまうのです。

過去の成功体験が大きいほど、「あの会社で、あの環境だったからできたこと」を、自分個人の実力だと錯覚しやすくなります。潤沢な予算、優秀なチーム、確立されたブランド、既存の顧客基盤。そうした恵まれた環境があってこそ出せた成果を、すべて自分一人の力だと思い込んでしまう。看板や組織の力を、自分の力と混同してしまうのです。そして、その混同を抱えたまま転職市場に出ると、期待した評価と現実とのギャップに直面することになります。

「会社の実績」ではなく「自分自身」が評価されるように

だからこそ、この年代で気をつけるべきは、「会社の実績」ではなく「自分自身」が評価されるように意識することだと思っています。

前職のブランドや役職ではなく、環境が変わっても再現できる自分の能力は何か。それを冷静に見極め、言語化できているか。転職市場で問われるのは、まさにそこです。「大手企業で部長を務めた」という肩書きそのものには、実は市場価値はありません。問われるのは、「その立場で、具体的に何を、どうやって成し遂げ、それは別の環境でも再現できるのか」です。

評価されにくい語り方
「大手の○○で部長でした」「あの有名プロジェクトに関わりました」——過去の看板・肩書きに寄りかかる
評価される語り方
「こういう課題を、こう分析し、こう動いて解決した。この進め方は環境が変わっても再現できる」——自分の能力を語る

過去の成功にしがみつくのではなく、その経験から何を学び、次の環境でどう活かせるのかを語れる人。看板が外れても通用する実力を持つ人。そういう人だけが、40代でもプラスの転職を実現できるのだと思います。逆に言えば、年収を下げてしまう40代は、この「看板と実力の切り分け」ができていないケースが多いのではないでしょうか。

経験が武器になる年代だからこそ

経験が武器になる年代だからこそ、その武器が「本当に自分のものか」を問い直す姿勢が、これまで以上に大切になると感じています。

これは、転職を考える40代本人にとっての教訓であると同時に、実は、日々の働き方への問いかけでもあります。今の自分の成果は、会社の看板があるから出せているのか。それとも、どこへ行っても通用する自分の力なのか。この問いを、転職の場面になって初めて突きつけられるのではなく、普段から自分に問い続けておく。そうすれば、いざというときに、慌てずに自分の価値を語れます。

そして、これは採用する企業の側にとっても、示唆があります。応募者の「過去の華々しい実績」に目を奪われるのではなく、その成果が本人の再現可能な能力によるものなのかを、丁寧に見極める。看板を外した先にある、その人自身の力を見抜けるかどうかが、採用の成否を分けます。

まとめ

  • 40代の転職者数は全世代で最も伸び、「35歳限界説」は過去のものに。人手不足が門戸を広げた
  • 一方で、転職後に年収を下げているのは40代だけ。門戸は広がったが、待遇面の厳しさが残る
  • 落とし穴は、看板や組織の力を自分の力と錯覚すること。過去の成功体験が大きいほど、混同しやすい
  • 問われるのは、環境が変わっても再現できる自分の能力。それを見極め、言語化できる人だけが、40代でもプラス転職を実現できる

40代の転職市場が広がっていることは、間違いなく明るいニュースです。しかし、その門をくぐった先で正当に評価されるかどうかは、自分自身の力をどれだけ客観的に把握し、語れるかにかかっています。看板は、いつか外れます。役職も、会社を離れれば意味を失います。残るのは、環境が変わっても通用する、自分自身の力だけです。その力を磨き、言語化しておくこと。それが、これからの時代を生きるすべての働き手にとって、最も確かな備えになるのだと感じています。

【出典・参考】
ITmediaビジネスオンライン「40代の転職が増えている でもどのところ、年収は上がるのか、下がるのか」(2026年8月25日、パーソルキャリア「doda」調査より)

本記事は公表情報をもとに一般的な情報提供・考察を目的として作成したものであり、個別の転職や採用の結果を保証するものではありません。数値は出典記事に基づく参考値です。

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