2026年、自律型AIエージェントの進化を背景に、「Consulting is Dead(コンサルの死)」という言説が広がりました。実際にコンサルティング各社やSIerの株価が大きく下落し、業界の先行きを不安視する声も少なくありません。ただ、私はこの議論に対して、少し違う見方を持っています。AIで作業が効率化されても、コンサルティングが単純な値段勝負の世界になるとは思えません。むしろ、「価格以外の何にお金を払うのか」が、より鮮明になってくるのではないでしょうか。
安価なコンサルは増える。だが「見分けられない」
AIによって、分析や資料作成のコストは確実に下がります。その結果、安価なコンサルティング会社が次々と登場するでしょう。これは間違いなく起きる変化です。
ただ、ここに発注する側の難しさがあります。安価で実力のあるコンサルと、安価で実力のないコンサルを、着手前に見分けることは非常に困難です。コンサルティングの成果は、契約前の段階では判断しづらい。しかも、その成果は経営判断に直結するため、失敗したときのリスクが大きい。この「事前に選別できない」という構造が、結果として「とりあえず大手に頼んでおけば間違いない」という選択につながります。
大手のブランドは「品質保証の代替」として機能している
つまり、大手コンサルのブランドは、品質保証の代替として機能しているわけです。発注者は、作業そのものに対してではなく、「外したくない判断における安心料」を払っている。これが、コンサルティングという商売の本質的な一面です。
この視点に立つと、興味深い逆説が見えてきます。AIが作業を代替すればするほど、「作業の対価」は下がる一方で、この「安心料」の価値は、むしろ際立つ可能性があるのです。誰でも安価に分析や資料を作れる時代になればなるほど、「では、その判断を誰が保証してくれるのか」という問いの重みが増す。作業がコモディティ化するほど、信頼の希少性が上がる、という構図です。
懸念は「価格競争の連鎖」
とはいえ、懸念がないわけではありません。最大のリスクは、価格競争の連鎖です。
もし大手が「AI活用による効率化」を理由に値下げを始めれば、本来ブランド力で勝負していたはずの市場全体が、つい価格追随に巻き込まれるリスクがあります。そうなると、勝負の軸が「価値」から「体力」に移り、資金力のある大手が有利な消耗戦になる。この展開になれば、中小のコンサルティング会社は厳しい立場に置かれます。安心料という価値が成立するのは、市場が価格競争に陥らない限りにおいて、とも言えるのです。
向かうべきは「信頼の可視化」
では、知的労働者はこれからどこへ向かうべきか。私は、価格でも作業量でもなく、「この人になら任せられる」という個人やチームへの信頼を、いかに可視化していくか——その方向ではないかと感じています。
これはコンサルティングに限った話ではありません。AIによって「作業」の価値が下がっていく時代において、あらゆる知的労働者に共通する課題です。実績、専門性、過去の意思決定の質——こうした「目に見えにくい信頼」を、いかに発注者に伝わる形にしていくか。大手のブランドが担ってきた「安心料」の役割を、組織の看板に頼らず、個人やチーム単位で築いていけるか。AI時代の専門職の勝負どころは、ここにあるのだと考えています。
参考・出典
※本記事は報道されている事実をもとにした筆者個人の見解です。特定の企業や投資判断を推奨するものではありません。
